土曜日, 10月 28, 2006

お昼からは、最近行われたCHADDの成人AD/HD会員対象の調査の発表&AD/HDに対する偏見に対応する、の2セッションに出席の予定だったが、発表スライドが表示されなくて原稿読み読み&議論の応酬。わ、わからん…、と思っていたら寝てました。ひー、CHADDのCEOの目の前で居眠りかよー。ってか、時差ボケボケなんですけど。うみゅー。
そして、バークレー先生再登壇。AD/HDって名前が良くないよね。Execute Functionに関する障害だからEFって略がいいかも。とおっしゃる。で、診断基準に「新しく買った機械を、説明書を読まないで使い始める。」とか「スピード違反を良くする。」とか出てきて、なんか笑ってしまう。でも、両方ともちゃんと統計を取っていっているところがスゴイ。

写真が、質問に耳を傾けるドリームチームの皆さんです。
午後は、President of CHADDに「ドリームチーム」と紹介されていた、3人の研究者による「この10年の研究でAD/HDに関して何がわかったのか?」と題するシンポジウム。最初は男前のProf. Jensenによる、3~4年の治療例をたくさん分析・調査した結果。何にもしない、MPH(リタリンとか)投与、心理療法、投薬と心理療法の複合の4つの群で比較。基準を用いて数値的に症状改善度を測ると、複合療法、投薬のみ、心理療法のみ、何もしないの順になる。ところが、「親の満足度」は心理療法のみが複合療法を抜いて1番になっちゃう。(3番4番は変わらず。)心情的に納得できるけど、みんなそんなに薬がきらいなのかね。あと、親の満足度は出てたけど、本人はどう思っているかの統計はなかったな。

2日目の朝のセッションは、Prof. Biedermanの神経生物学的なADHD研究の進捗の解説。MRIで見ると有意にAD/HDって頭小さい部分があるんだけど、日本で言われている前頭 葉だけってわけじゃなく、脳のかなりいろいろな部分でその傾向が見られるとのこと。さらに不注意と実行機能で、それぞれ3箇所くらいの相互作用が起こって いんだよね。っていうお話。AD/HD⇒ワーキングメモリ⇒前頭葉って過度な単純化はまずいのね。あと、全体の傾向としてはこうなんだけど、個体としての 診断に使えるかどうかはわかんないんだそうです。

金曜日, 10月 27, 2006


今年もCHADDに来た。今日は、午前は薬関係の最近の動向のセッション、午後は休んで、夜はバークレー先生の成人AD/HDの講演を聴いた。

そうか、バークレー先生は最近は成人関係の研究に力を入れてるのね。まずは写真を押さえて、と思って最前列の右端で聞いていたら、結構凄いことをやろうとしている。

AD/HDの診断基準はDSM-IVなどいくつかあるが、歴史的経緯から小児に対する基準になっていて、成人を判断しようとすると限界がある。だから、成人に関する新しい診断基準を作るためにNIHの金を入れて結構大掛かりな調査を行っていて、その調査の現状が報告されている。数字というものは情け容赦が無い。人生のいたる所でAD/HD的困難にぶつかっているさまが、次々と棒グラフで流れていく。隣の、メキシコから来たセラピストのお姉さんと「Oh...」とため息を連発。

DSM-IVの9の症状のうち6は成人にはいらないね。とか、6歳で症状が表れるという「6」というマジックナンバーは考え直して、14~16くらいが適当じゃないか。とか、衝撃的な事をおっしゃる。むむむ。

遠からぬうちに、成人の診断基準が誕生することになるのだろうか。

月曜日, 10月 09, 2006

「なぜADHDのある人が成功するのか」を読む。

日本語で読める、成人AD/HDの仕事の進め方の本。仕事に重点を置いている和書としては本邦初ではなかろうか。
監修が田中康雄先生で、訳が海輪由香子さんということで、安心感をもって期待して購入。

読みやすく、示唆に富み、明日から使えるのに、深く考えさせられる内容となっている。

しかし、一回目の読了までの間は、AD/HDに関する新手のトンデモ本ではないかと思ってしまう違和感も感じた。原著者の「狩猟民・農耕民」の要約が相当な言い切り型になっているからである。他の多くの書で「AD/HD=狩猟型」の類型化をみかけるが、これは完全には検証されていない仮説の段階に過ぎないのではないか。昨年のCHADDで、引用されているNIH, UC Irvineの論文のプロジェクトについて、 Swanson教授自身がキーノートで講演していたのを聞いたが、さらに追試・大規模な調査をおこなっていると述べていた。AD/HDの日本における権威者が監修する書籍での言及であり、周辺の関係者で検証なく鵜呑みにされ、過度の決め付けになってしまわないか大変心配と感じた。

しかし、最後の「監修者あとがき」を読んで合点がいった。あとがきには「特に狩猟民と農耕民について」と副題がついており、まさにこの点に関する言及があった。原著者の仮説を、監修者自ら検証しなおしたと述べられている。推測するに、監修者もこの言い切りに関しては、まだ逡巡があるのではなかろうか。

この点を考慮して思い返し、「狩猟民・農耕民」を、その学術的に厳密な定義と真偽は別にして、AD/HDの形質をシンボライズするキーワードとして使う限りにおいては、大変便利な用語ではある。原著者が冒頭でも述べているとおり、「実践的な要約書」としてありがたく使わせてもらおう。

「なぜADHDのある人が成功するのか」