火曜日, 12月 12, 2006

今月号のAttention magazineがCHADDから送られてきた。そこに、先日のDr. Barkleyの講演で出た、New AD/HD Diagnostic Symptoms for Adults(新しい成人向けAD/HD診断症状)が掲載されている。

Source: Barkley, R.A., Murphy, K.R. & Fischer, M. (2007). AD/HD in Adults: Original Research, Integration and Clinical Implications. New York: Guilford Publications.

According to Drs. Barkley and Murphy, to be diagnosed with AD/HD adults must have six out of nine of the following symptoms. Only symptoms 1, 8 and 9 are found in the current DSM. The rest are based on difficulties with executive functioning. Note, according to the researchers, hyperactivity is not symptom that distinguishes adults with AD/HD from others. (バークレー博士、マーフィー博士によると、以下の9つの症状のうち6つがみられることで、成人をAD/HDと診断する。症状1,8,9だけが現在のDSMに記載されている。その他は実行機能の問題に基づく。彼らの研究によれば多動性は成人のAD/HDと健常者を区分する症状とはならない。)

  1. Is often easily distracted by extraneous stimuli. (しばしば、外部刺激により簡単に気が散る。)
  2. Often makes decisions impulsively. (しばしば、衝動的に物事を決める。)
  3. Often has difficulty stopping activities or behavior when he or she should do so. (しばしば、やめなければいけない行動や振る舞いをやめる事が困難である。)
  4. Often starts a project or task without reading or listening to directions carefully. (しばしば、使用説明を注意深く読んだり聞いたりすること無く、プロジェクトや仕事を始めてしまう。)
  5. Often shows poor follow-through on promises or commitments he or she may make to others. (しばしば、他者との約束を完遂する能力に劣ること状況がみられる。)
  6. Often has trouble doing things in their proper order or sequence. (しばしば、物事を順序どおりに行う事が困難である。)
  7. Often more likely to drive a motor vehicle much faster than others (excessibe speeding). (しばしば、自動車を他の人よりかなり速い速度で運転しそうになる。)
  8. Often has difficulty sustaining attention in tasks or leisure activities. (しばしば、仕事や余暇活動に注意を向け続けることが困難である。)
  9. Often has difficulty organizing tasks and activities. (しばしば、仕事・活動をちゃんと行うことが困難である。)
うーむ。こんなの健常者でもいっぱいあるよって気もするが、9個中6個という条件と、「しばしば」の程度が問題ということだろうか?さっそくオリジナルにあたってみることにしよう。

木曜日, 11月 30, 2006

あぁ、そうだ。怒られた話も書いておこう。

2~3日、講演のスライドをバシバシとデジカメに撮っていたら、目立ったみたいで、ある日講演者に「そんなにスライドをバシバシ撮るな。」と注意された。「なぜそんなに撮るのか?」「いや、日本の仲間にblogレポートを作りたいんだ。」「発表の中には学会に未発表の内容を含む物がある。スライドが欲しいなら講演者に後で連絡を取りなさい。」と諭されました。

ちなみに、その講演者は Prof. Sam Goldstein。 大変面白い話をするので、その筋では超人気のあるおぢさんらしいです。去年のCHADDで感想を言いに行ったら、「そのうち日本行きたいんだよね。」「是非、講演してくださいよ。」なんて会話をした。今年も顔を覚えてくれていたみたい。いい人。

さらに、ちなみに、CHADDの受付で事前に「写真を撮るのはかまわないか?」は主催者に尋ねておいた。「ステージ側はOK。参加者を取るときはプライバシーに気をつけて事前に了承を得てね。」と言われていた。結構事前確認重要。

日曜日, 11月 26, 2006


もう、あれから1ヶ月以上たった。本日CHADDからDVDが4枚到着。バークレー先生の成人ADHDのDVDとか見直してみる。右はDVDからのスクリーンショット。(講演名は AD/HD in Adults: Impact on Major Life Activities and Implications for Intervention)

DSM-IVと様相がかなり違う。説明書を読まないで何かに取り掛かろうとする、運転でスピード出し過ぎとか、こういうのでAD/HD診断できるのだろうかとぱっと見思うが、ちゃんと調査に基づいているのだよな、これが。

このあとに、金銭問題をどれくらい抱えるかとか、家族問題はどうだとか続く。ある意味身もふたも無い。しかし、その現実を直視しないとね。うーむ。

ちなみにDVDは http://www.aven.com/conf.cfm/cid/956 から購入可能です。

土曜日, 10月 28, 2006

お昼からは、最近行われたCHADDの成人AD/HD会員対象の調査の発表&AD/HDに対する偏見に対応する、の2セッションに出席の予定だったが、発表スライドが表示されなくて原稿読み読み&議論の応酬。わ、わからん…、と思っていたら寝てました。ひー、CHADDのCEOの目の前で居眠りかよー。ってか、時差ボケボケなんですけど。うみゅー。
そして、バークレー先生再登壇。AD/HDって名前が良くないよね。Execute Functionに関する障害だからEFって略がいいかも。とおっしゃる。で、診断基準に「新しく買った機械を、説明書を読まないで使い始める。」とか「スピード違反を良くする。」とか出てきて、なんか笑ってしまう。でも、両方ともちゃんと統計を取っていっているところがスゴイ。

写真が、質問に耳を傾けるドリームチームの皆さんです。
午後は、President of CHADDに「ドリームチーム」と紹介されていた、3人の研究者による「この10年の研究でAD/HDに関して何がわかったのか?」と題するシンポジウム。最初は男前のProf. Jensenによる、3~4年の治療例をたくさん分析・調査した結果。何にもしない、MPH(リタリンとか)投与、心理療法、投薬と心理療法の複合の4つの群で比較。基準を用いて数値的に症状改善度を測ると、複合療法、投薬のみ、心理療法のみ、何もしないの順になる。ところが、「親の満足度」は心理療法のみが複合療法を抜いて1番になっちゃう。(3番4番は変わらず。)心情的に納得できるけど、みんなそんなに薬がきらいなのかね。あと、親の満足度は出てたけど、本人はどう思っているかの統計はなかったな。

2日目の朝のセッションは、Prof. Biedermanの神経生物学的なADHD研究の進捗の解説。MRIで見ると有意にAD/HDって頭小さい部分があるんだけど、日本で言われている前頭 葉だけってわけじゃなく、脳のかなりいろいろな部分でその傾向が見られるとのこと。さらに不注意と実行機能で、それぞれ3箇所くらいの相互作用が起こって いんだよね。っていうお話。AD/HD⇒ワーキングメモリ⇒前頭葉って過度な単純化はまずいのね。あと、全体の傾向としてはこうなんだけど、個体としての 診断に使えるかどうかはわかんないんだそうです。

金曜日, 10月 27, 2006


今年もCHADDに来た。今日は、午前は薬関係の最近の動向のセッション、午後は休んで、夜はバークレー先生の成人AD/HDの講演を聴いた。

そうか、バークレー先生は最近は成人関係の研究に力を入れてるのね。まずは写真を押さえて、と思って最前列の右端で聞いていたら、結構凄いことをやろうとしている。

AD/HDの診断基準はDSM-IVなどいくつかあるが、歴史的経緯から小児に対する基準になっていて、成人を判断しようとすると限界がある。だから、成人に関する新しい診断基準を作るためにNIHの金を入れて結構大掛かりな調査を行っていて、その調査の現状が報告されている。数字というものは情け容赦が無い。人生のいたる所でAD/HD的困難にぶつかっているさまが、次々と棒グラフで流れていく。隣の、メキシコから来たセラピストのお姉さんと「Oh...」とため息を連発。

DSM-IVの9の症状のうち6は成人にはいらないね。とか、6歳で症状が表れるという「6」というマジックナンバーは考え直して、14~16くらいが適当じゃないか。とか、衝撃的な事をおっしゃる。むむむ。

遠からぬうちに、成人の診断基準が誕生することになるのだろうか。

月曜日, 10月 09, 2006

「なぜADHDのある人が成功するのか」を読む。

日本語で読める、成人AD/HDの仕事の進め方の本。仕事に重点を置いている和書としては本邦初ではなかろうか。
監修が田中康雄先生で、訳が海輪由香子さんということで、安心感をもって期待して購入。

読みやすく、示唆に富み、明日から使えるのに、深く考えさせられる内容となっている。

しかし、一回目の読了までの間は、AD/HDに関する新手のトンデモ本ではないかと思ってしまう違和感も感じた。原著者の「狩猟民・農耕民」の要約が相当な言い切り型になっているからである。他の多くの書で「AD/HD=狩猟型」の類型化をみかけるが、これは完全には検証されていない仮説の段階に過ぎないのではないか。昨年のCHADDで、引用されているNIH, UC Irvineの論文のプロジェクトについて、 Swanson教授自身がキーノートで講演していたのを聞いたが、さらに追試・大規模な調査をおこなっていると述べていた。AD/HDの日本における権威者が監修する書籍での言及であり、周辺の関係者で検証なく鵜呑みにされ、過度の決め付けになってしまわないか大変心配と感じた。

しかし、最後の「監修者あとがき」を読んで合点がいった。あとがきには「特に狩猟民と農耕民について」と副題がついており、まさにこの点に関する言及があった。原著者の仮説を、監修者自ら検証しなおしたと述べられている。推測するに、監修者もこの言い切りに関しては、まだ逡巡があるのではなかろうか。

この点を考慮して思い返し、「狩猟民・農耕民」を、その学術的に厳密な定義と真偽は別にして、AD/HDの形質をシンボライズするキーワードとして使う限りにおいては、大変便利な用語ではある。原著者が冒頭でも述べているとおり、「実践的な要約書」としてありがたく使わせてもらおう。

「なぜADHDのある人が成功するのか」